麻の歴史

日本での麻の使用は縄文時代にまで遡ります。この植物は、繊維が布や衣服、紐や縄として使われるだけでなく、種も食物や油の原料として使われてきました。特に手入れ、肥料を必要とせず、雑草のようにたくましく育つ麻は「神からの贈り物」と考えられていたようです。伊勢神宮をはじめ神社では、この「神からの贈り物」を使って鈴縄や注連縄が作られていましたし、結婚のときには結納品の中の友白髪として使われ、また赤ちゃんのへその緒は麻の糸で結んで切っていたそうです。このように麻は日本人の日常生活ばかりでなく、信仰生活とも深く結びついた大切な作物でした。

 

こうした状況が一変するのは、戦後GHQの占領下で「大麻取締法」が制定されてからです。この法律によって日本は、伝統も将来性もあった麻の加工産業から手を引くことを余儀なくされ、アメリカが中心となる石油化学産業の支配下に置かれました。

その結果、今日では日本人の実に95%が麻(大麻)に対して、麻薬、違法、警察などのネガティブな連想をもつようになりました。このことは、日本の伝統文化と深い関係があり、最近ではヨーロッパやカナダなどの欧米諸国で環境素材として見直されている麻の資源価値を理解する大きな妨げになっています。

現在、ヨーロッパ(オランダ、イギリスその他)、カナダ、そして日本に大麻栽培を禁じた当のアメリカの諸州で、麻の栽培は合法化され、衣料、食品、化粧品、紙、建材、複合素材、燃料、潤滑油、肥料、飼料、敷き藁など石油資源と木材資源の代替品として、また医薬品、抗菌剤、天然農薬、ハーブ茶、香料として、実に2万5000種類とも言われる生活用品・工業製品への加工と、関連ビジネスの開発がさかんに研究されています。

私たちはこのような世界の趨勢を見すえ、石油化学産業に代わる麻の加工産業の未来に熱く期待を寄せる者です。そう遠くない将来に、この麻という「神からの贈り物」に対する偏見が改まり、日本でも産業利用を目的とした麻の栽培が解禁され、古来の伝統文化が復活するとともに、日本人が新たな進取の気象をもってこの石油に代わる代替エネルギー産業に参加していくことを願ってやみません。すでに述べたように、そのビジネスの裾野はほとんど無限大なのですから。